圭はスポーツドリンクのボトルキャップをとり、美味そうに飲み始める。すると前の国道を見ながら、千佳が自分のバイクの話を始める。
「圭に選んでもらった新しいバイク、この辺を走り回るのにとても便利だわ。私のバイク、圭の駐車場に置かせてもらったけど、いいでしょう?」
圭からはそっけなく、「あー、いいよ」の返事が返ってくる。二人はその椅子に座ったまま、バイクの話でずっと盛り上がっている。しばらくすると、店の中でお客さんと話をしていたオーナーのヨッサンが、外のデッキに出てくる。圭が声をかける。
「ヨッサン、今、店の中にあるシャワーは空いている?」
返事が返ってくる。「圭、今ならシャワーは空いているよ。勝手に使ってくれ」
圭は脱ぎ捨てたウエットスーツを千佳に預け、サーフショップの中にあるシャワー室に飛び込んでいく。千佳は脱ぎ捨てられたウエットスーツを抱え、デッキの横にある洗い場に置いてホースで水をかけ始める。ヨッサンが声をかけてくる。
「千佳ちゃん、そのウエットスーツを洗ったら、裏にあるいつもの干し場のところに掛けておきな」
ヨッサンはそう言ってまた店の中に戻っていき、客と話を始めている。品の良いロマンスグレーのヨッサンは、このあたりでは有名な伝説のサーファーで、少しお腹のまわりが気になっている。千佳が店の裏にウエットスーツを掛けて戻ってきた時、ショートの髪を後ろに束ねた女が一人で店に入ってきて、シャワーのことを聞く。
「ここの立て看板に書いてありましたが、店のシャワーを貸していただくことはできますか?」
ヨッサンが返事をする。「いいよ。今、サーファー一人がシャワーを使っているけど、もうすぐ空くから使ってよ。外のデッキでウエットスーツを脱いで、そこの椅子に座って待っていて」
女は外のデッキの上でウエットスーツを脱ぎ、黒いビキニ姿で千佳の隣の椅子に座り、シャワーの順番を待っている。その女のウエットスーツの下の肌は白っぽく、あまり日焼けをしていない。今時のサーファーは、無理に太陽の下で肌を焼くことはしない。