小説 『愛され未亡人の、湯けむり恋物語』 【第5回】 月川 みのり 目を閉じると、柔らかくて温かいキス…膝が折れそうになった私を彼が支えてくれて「ずっと、こうしたかった」と囁かれ… 【前回記事を読む】あの夜から3日、触れられた温もりがまだ消えない…意識して目も合わせられないけど、実は彼の“サイン”に気づいていた常連客の一件をきっかけに、よし子は1冊のノートを作った。100円ショップで買った大学ノート。表紙に「お客様帳」と書いた。ページごとにお客様の名前、好み、苦手なもの、前回の会話の内容、お子さんやお孫さんの話。気づいたことは何でも記録した。節子が覗き込んで「何それ」と言っ…
小説 『山並みの彼方へ』 【第7回】 荻野 敏文 「毎日“奴隷”のように働き続ける母を、なんとかしたい。」私の夢は、父の“たった一言”で終わった。 【前回記事を読む】毎日学校から帰ると、皿の上に大きなおにぎりが1つ。横に1枚の紙片が置かれ、母の筆跡で「食べ終わったら、畑まで来い」悲劇は父の一言から始まった。日頃から高校への進学は反対されるという事を芳正の言動からそれとなく感じ取ってはいたが、進学の希望を学校に申告する日も迫っていたので、一郎は意を決して芳正に切り出した。「家の手伝いも今以上に頑張るから、農学校に行かせてください。お願いします…