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第2章 いけ花と私

はるは来る

冬も終わりに近づき、徐々にコートの生地も薄くなっていきます。私はいつも外出する際、足元だけは冷やさないように気をつけています。2枚重ねのストッキングで足を覆えば、さあ大丈夫! 季節はもうすぐ春です。

狭い会場ですが、ぎっしりと棚にいけ花の作品が並びました。場所はデパートの地下通路ですが、駐車場へつながったり、新館と本館をつないでいる場所なので、人の往来が多いところです。いけ花に興味のある方も、興味のない方も通ります。はたしてどれくらいの足が止まるのか?

会場にはいくつもの作品が並びました。色とりどり、種類も数多く、春のいけ花が並んでいます。辺りは華やか。会場内を通りゆく人々が、自分のいけた花を見てくれたら、何がしかの反応があるかもしれないと期待して、とりどりの花器に花をいけています。

私はほっそりした茶色の銅器にいけました。茶色の器に黄色の花が合い、黄色の花には紫の花がよく合います。春の華やかさと、冬の寒さをじっと我慢して待った春の暖かさに、ウキウキした感情を表したい! そう思った私は、主材をのびのびとしたレンギョウにしました。

花の色は紫のリューココリーネにしました。冬に咲くスイセンの葉をもちいて動きを出します。会場を訪れた人が展示されたいけ花を見たことで、幸せな気分になっていただけたら、いけたほうも幸せを感じてきます。これがいけ花の醍醐味です。

人と人の見えない絆を作っていきます。とはいえ、表現することって難しいなあ。何をどうやって表すか……思案どころです。たくさんの花のなかから、気に入ったものを選んでも、それをうまく作品に活かすには、やはり技術が必要なのです。いけているうちに手は冷たい水を扱って、ひび割れができてきます。ばんそうこうを貼りながら……生みの苦しみ……くじけそうになります。

これを何とか楽しみに変えたい! 気持ちの切り替えが必要かもしれない……。いけ上がった花を目の前に飾れば、そこにはもう、苦労や苦痛などどこにもありません。花でいっぱいの会場は笑顔であふれていました。

いけ花をいけるためには、基本の技術を学ぶ必要がありますが、学んだ技術を生かして、創作をします。テーマをもったほうが、見てくれた人により伝わりやすい作品ができると思います。花や木を使って花器にいけていきます。何の花や木を使うかを決めたら、主役を中心にして、別の花や木を配置していきます。

主役は大切ですから、それに合う花を配置するときに、色彩の状態、花や木との関係やバランスなど考えて配置していくと、より強くインパクトがあると思います。私は自分自身を輝かせることに疎いので、せめて花の力を借りて、輝いていたい! などと考える輩でゴザイマス〜(笑)。

後日、花の展示を見てくれた友人が写真を撮ってメールで送ってくれました。会場の花は見てもらって喜んでいるでしょう。そしてもちろん、見た人たちの幸せを願って咲きほこっています。はるは確実にやってきます。目の前に!