第二章 伝統的テコンドーの三つの要素
伝統的テコンドーは、以下三つの基本的な身体的トレーニングに分けられる。
一 型(ヒョン)
二 組手(テリョン)
三 撃破(キョッパ)
これらは、トレーニングの基本的側面であり、それぞれに重要な意味と価値がある。
型(ヒョン)
型は、絶対必要なことだとは言わないまでも、テコンドーにおいて極めて重要な部分である。型の数は、当初二十種類であったが、チェ将軍の流儀を完成させるため、後に四つの型が加えられた。この二十四種類は、一日二十四時間を象徴的に意味するものである。ゆっくりと時間をかけて、日々の積み重ねがその人の一生を作るようなイメージである。
型は、テコンドーの技術的基礎であり、全てを十分に理解し習得することが重要である。
型はテコンドーの動作の集大成であるため、この技術の存続は欠かせない。生徒は、全ての型を理解し、テコンドーの全体像における基本原理を学ばなければならない。
そして正しく型を理解すれば、限りない数の技術の組み合わせができる。また、テコンドーの深い哲学的信条は、護身目的にのみ使われる。型それぞれが守備の動作から始まるように、全ての型にはテコンドーの哲学的信条を表す象徴的意味が含まれている。
技術の解説と型の適用
型とは、一人もしくは数人の敵を想定した象徴的な格闘技である。型には様々な種類があり、生徒は、怪我などの危険や敵との交戦なく全力で練習することができる。
また、型 は、肉体、心、精神を鍛えるための練習となる。肉体、機敏性、スピード、体力を増強し、我や病気の回復に負担の少ないトレーニングとして有効である。型の動きを正しく理解し、型から動作パターンを自ら分析し構成できるようになれば、生徒はあらゆる動作を行 えるようになるだろう。
生徒の中には道場の練習に来られない人もいるが、型は高度な練習には不可欠なものである。一旦型を習得し理解すれば、最終的に生徒は自分だけでトレー ニングを行うことができるだろう。
正しい呼吸法は、テコンドーの全ての動作において重要な役割を果たし、型の動きにとっ ては特に重要である。
呼吸法では、鼻から息を吸って口から息を吐く。息を吐く時に大きな声を出して「気合い」を入れることは、物へ衝撃を与える時に威力を増大させる効果がある。
また、呼吸をする時は、へそから指三本下に位置する丹田に力を集中させる。丹田とは、気合いを入れる上でも重要な場所であり、体のエネルギーと気が流れる中心地である。
また、丹田は、帯の結び目が位置する場所でもあり、生徒に体の中心を意識させる上で重要だ。また、全てのパワーを生み出し、呼吸の際に集中すべき場所でもある。
大きな声を出して「気合い」を入れることは、技術の中から生み出される力に集中し、その威力を増大する効果がある。また、それは抑止力として働き、相手に対する威嚇となる。重いものを運ぶ時に息を吐くように、「気合い」は、激しい動きの際に肺に圧力がかかりすぎないようにしてくれる。これによって肺胞の破裂リスクを減らすことができる。
また、「気合い」によって、生徒たちは正しい呼吸法を学べる。伝統的テコンドーでは、生徒は一つの動きが終わる度に息を吐くことはしない。
というのも、動作の流れを考えれば、それは型をよりダイナミックで自然な動きにするからである。型を行う時、「気合い」は、力強い攻撃と守備を示すために有効である。
呼吸法のトレーニングを通じて、生徒は常に呼吸を整え、敵に対して呼吸パターンを見せないように心がける。体が疲弊していても、できるだけすぐ呼吸を整えなければならない。
テコンドーでは、自身の疲労を相手に見せることは、相手にとって試合を有利に動かす情報となるため、呼吸パターンを隠すよう試みる。
また、敵は、息を吐くとお腹の緊張が緩むと察し、それを攻撃のチャンスだとみなして有利に動こうとする。そうした点から、「気合い」は、唯一相手に聞こえてもいい呼気なのである。
「気合い」とともに出される力強い呼気は腹筋を引き締め、相手にインパクトを与えるための防御的盾となる。
一般的に、テコンドーの生徒たちは、自分の感情や体の状態を相手に知られないように努めなければならない。相手に自分の精神的、身体的状態を読まれることは、試合において非常に不利であるからだ。