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白い制服と亜麻色の髪が、快活に揺れながら、黒い影の向こうへ溶けていく。その背中が完全に消えたことを確認し、鞄を持ち直すと、私はベンチには座らずホームの鉄柱に背中を預ける。
預けられた鞄に視線を落とす。鞄の持ち手にはアニメキャラクターを模ったラゲッジタグが付いていて、ネーム面には細いマジック字でこう書かれていた。
『島本 紗世子』
島本紗世子──さよちゃん。
白い肌と亜麻色の髪の持ち主。
私と彼女の関係を言葉にするのなら……何が適切だろう? 友達、親友、幼馴染、先輩・後輩、どれもしっくりこない。ただ、客観的かつ簡潔に言い表すのなら、「幼い頃に近所に越してきた一つ年上の女の子」。これに尽きる。
私がまだ小学生の頃、仕事の都合で引っ越してきた島本家の長女が彼女だ。
近所と言っても田舎でのそれだから家が隣り合っているわけではなく、数百メートルは離れていて二つの家の間には田んぼや畑が挟まっていたけれど、他に歳の近い女の子がいなかったこともあって、私とさよちゃんはほとんど毎日互いの家を行き来する仲だった。
最初からそれほど仲が良かったのかというと……答えはたぶんイエスだ。彼女が私のことをどう思っていたか正直に教えてくれるとは思えないし、知るすべもないけれど、少なくとも私の中ではそうだった。