夏山にて1
眩い光、蒸し暑い道、のびる夏草
噴き出る汗を流れるにまかせて歩く
土に汚れたスカートに気付かなかったあの女
朝帰りの電車に並んで座ったぎこちない二人
尾根に近づくと涼しい風が吹く
杉に覆われた山道、飛び立つ鳥
酔い痴れて公園で抱き合った二人
思い続けた夢が実現して呆然とした私
夏に入ったばかりなのにカナカナが鳴く
すぐ近くで、向こうで、そして全山で鳴く
酔った挙句の間違いとでも思っているのだろうか
木々の向こうはカドミウムグリーンの葉
樹間に見えるは哀しい程の青い山
どうしても逢ってくれないその後のあの女