では、何から聴いていけばよいのか。ビートルズに限らず、古いバンドは特に作品数も多く、オリジナル・アルバムを聴くといっても、何から手をつけていいか定まらず、ベスト・アルバムを聴いてしまうという傾向が多いと思います。
もちろんその聴き方でもよいとは思うのですが、ベスト・アルバムのみで止まってしまうと、隠れた名曲を知ったり、どういう音楽を作ろうとしていたバンドなのかなど、音楽を通して“そのバンドを知る”ということが困難になってくるかと思います。けれど作品数の多いバンドを聴くのは、根気と時間が必要になってきてしまうので、まずベスト盤を聴き、その中から好きな曲を抜粋し、その曲が入っているアルバムを聴く。
これが、初心者が全体を把握しながら、自分の好きなテイストを素早く見つけるための、最も優れた聴き方であり、大抵のミュージシャンなら、十分に良いとこを押さえられると思うのですが……、ビートルズには通用しないのです。
それは先ほど説明した通り、ビートルズのベスト盤は初期の曲が多いというのと、オリジナル・アルバム未収録のシングル曲が多数収録されているからなのです。
このアルバム未収録のシングル曲が多いというのは、「同じ曲を二回買ってもらうのは嫌だから」そういったジョン・レノンの意向でもあるのです。ではどのように“ビートルズに触れた人”人達は、ビートルズを聴き始めるのがよいのか。まずはオリジナル・アルバム十三枚と『パスト・マスターズ Vol.1&2』の計十五セットを聴くのが最もよいと思います。
『パストマスターズ』とは、アルバム未収録のシングル曲のA面とB面を集めた作品で、かなり良い仕上がりになっています。正直、この聴き方に勝るものがありません。
けれどよほどの音楽好き、よほどビートルズに興味を持った方じゃないと、この聴き方はなかなか根気がいります。