夏の日に
登り行く程に油蝉とカナカナ
おのおの鳴き続け恋の季節を告げている
汗をたらして二人登ったは数年前
あの日の煌めく光を今も鮮やかに思い出す
身にまとわりつく蚊、蝿、飛ぶトンボ、蝶
鶯がすぐそばで鳴き鴉と鳶が彼方で鳴いた
誰も居ない頂上で唇を合わせた時
樹木の間を渡る風の音にもビクリとした
蛇が山道から斜面を下って走った
虻がうるさく羽音を立てている
小屋の中できつく抱き愛撫し合った
山が淡く灰色にかすんでいる
夏はあらゆる生物の活動の季節だ
あの女はどこに行ってしまったのだろう