【前回の記事を読む】作品集「黒い花Ⅱ」より三作品

秋の山に──

曇り空のもと秋色の山に入る

風は冷たく黄色のかえでが目に鮮やか

薄はもう頭をたれて毛ばだっている

どこかで何かが呼びもどしている

私は何をしているのだ

この道は間違って無かったのだろうか?

破れた心でいつもさまよっている

何者かがひそかに呼びかけているのだ

薄暗い杉木立の中行く道は

曲がりくねって灰色に沈んでいる

立ちどまると木々をふるわせ風が渡った

どこに行けば良いのだろうか?

今からでも間に合うのだろうか?

風に吹かれて黄色い葉が舞った