紫陽花は──

紫陽花は故知らぬ悲しみ

初夏の夕ぐれにほのかに浮かび

あの(ひと)の吐息を思わせる

紫陽花は今だ果たせぬ希望

いつまでも明日を夢見て

青き希望のままにてしぼむ

紫陽花はほのかなる追憶

暮れそめた田のあぜ道を

白き顔を想いて歩いた日の花

紫陽花は(かすみ)立つ春の山々

青白くうるんでは消えてゆく

はかない程の美しさ

紫陽花は生きてゆくさみしさ

故ありて別れた(ひと)

悲しき後姿ににじみ出る涙