しつけの応用編(我慢すること、待つこと、諦めることについて)
子どもが成長して、多様な人間関係を経験しながら社会生活をその子らしく生き抜いていくためには、嫌なことを克服する力を身につけなくてはなりません。
我慢することも、待つことも、諦めることも嫌なことばかりです。子どもは我慢できません、待てません、諦められません。諦めないこともときには大事ですが、諦めることも大事です。
おとなになればできて当たり前になり、できないと世間では通用しません。おとなになっても嫌なことは尽きません。子どもにどのように関わり、接していけば“嫌なことから逃げない気持ちを養う”ことができるようになるのかを、具体例を通して考えていただきたいと思います。
「我慢すること」を例にあげます。
母親と7歳の男の子がデパートに買い物に行きました。たまたまおもちゃ売り場の前を通り過ぎようとしたときの場面です。想像してください。子どもがおもちゃを指さして「あれ買って!」と言いました。もちろんおもちゃを買う約束はしていないし、たまたま通っただけでした。
このような状況で、母親は、「何でもすぐに買い与えては、この子のためによくない」、「我慢させなければ」と内心思ったとします。そのような場合には、いきなり「ダメ!」と禁止するのではなく、これから何をするのかをまず伝えなければなりません。「今日は買いませんよ。我慢しようね」です。つまり、「あなたはこれから我慢するということができるようになってちょうだいね」というメッセージです。
そのメッセージに対して、子どもは「ヤダ! 買ってよ!」とすぐには引き下がらないでしょう。これは通常のパターンです。
このとき、あまりに聞き分けがよかったら「なぜ、そんなに聞き分けがよいのだろう?」と考えてみてもよいかもしれません。
次に「なぜそのおもちゃをほしいと思ったのかを聞くことが必要です。「そのおもちゃを買ってほしいと思ったのはどうして?」と。すると「前からず~っとほしかったし、友達もみんな持ってるし」と買ってもらうための理由を並べるでしょう。そこで「わかったよ、そうだったんだね」と理由を受け取ります。
理由も聞かずに我慢しなさいと言われると「このおもちゃがどんなにほしいか知らないくせに、僕の気持ちなんかわかってくれない!」というストーリーになります。
理由を聞いたあとは、「このおもちゃがどれくらいほしいのかよくわかったよ。わかったけど今日は買いません、我慢しようね」と穏やかに返します。
このとき子どもは、「どれくらいこのおもちゃがほしいのか、わかったんだったら買ってよ!」と思うでしょう。当然ですよね。
では、この時点でなぜ我慢しなければいけないのかを、その理由を本人にわかるように説明しなくてはなりません。子どもに理解できて、ある程度納得できる説明をすることは結構難しいことです。
たとえば、「急に目についたおもちゃを買ってあげると、いつでも駄々をこねればほしい物がすぐに手に入るということになって、それはあなたにとってよくないことだと思うから、だから今日は買いませんよ。我慢しようね」と言ってみてはどうでしょう。
きっと子どもはその言葉をなかなか受け入れないでしょうね。
わが子に説明するために、我慢しなければならない理由を日頃から一生懸命考えておいてください。我慢の理由を説明したとしても、子どもはそれでもなかなか諦めないでしょう。生まれてから現在まで過去のデータを掘り起こし“こうすれば買ってもらえるかもしれない”という作戦に出ます。これは生き抜いていくために重要な作戦です。