(三)商品情報の見える化技術の確立 

商品情報の見える化について、大きな可能性を持つのはトヨタの取り組みだろう。

トヨタの進めるモビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)は、APIを経由して、コネクティッドカーから収集した車両データを設計開発などのサプライチェーンの上流にフィードバックしていく。

飲食料メーカーもこれまで食の安全の視点から商品情報の見える化に取り組んできた。たとえば、キリンビールは商品トレーサビリティとして、原材料から製品の出荷に至る各段階の履歴情報や検査結果などを追跡できるしくみをすでに構築している。またイオングループも、うなぎや国産牛肉など、PB(プライベートブランド)情報の生産履歴を確認できる独自のトレーサビリティシステムを有している。

さらにいえば家電量販店でも保守・修理時に保証書の裏側にRFタグを貼付して保守・点検作業の進捗を可視化するという実証実験が行われている。

したがって、大規模企業が自社ネットワークのデジタルプラットフォーム化を推進していくことは決して不可能なことではない。ちなみに経済産業省による流通システム標準化事業で日本チェーンストア協会、日本スーパーマーケット協会などの業界団体が検討、作成したEDI(電子データ交換)のガイドラインに流通BMS(ビジネスメッセージ標準)がある。

検品なし、伝票なしの取引を行うことを想定して作成されたものである。

ただし、トレーサビリティシステムの構築には多大な投資が必要になり、その見返りともいえるランニングコストの削減があまり見込めない。また、モノの流れの見える化と商品情報の見える化をいかに連動させていくかということが大きな課題ともなっている。

けれどもそれでもスマート物流サービスの確立に向けて、デジタルプラットフォームの構築を目指す流れは減速することはないだろう。たとえ時間はかかろうとも、物流・商流デジタルプラットフォームをしっかり構築することが日本経済再生の大きなカギを握ることになるのである。