一陣の風

風が凪ぎ、空気の流れがぴたりと止まっているように感じる朝でした。このような無風の日を「風が死んだ」と表現するそうです。

私は一通のメールを受け取りました。

それは、私の中でもずっと止まっていた風を再び揺り動かすものでした。

一陣の風。そのメールはそんな役割を果たしました。心が揺れます。

風には色があります。風には季節があります。まるで人生を表すように。あのとき、向かい風を感じて、封じ込めた想い。そのときから心の中で、凍結し、蓋をした想いが切なく蘇りました。言葉にできなかった想いを文章にしたためておきたい。二十年越しの歳月を経て、あなたに伝えたい。私は、言葉を紡ぎ始めました。

あなたへの手紙(前半)

前略

あなたの離婚を知らせるメールは、真美からのものでした。私の中に、あの甘酸っぱい感傷が蘇ります。

二十年の歳月は、あなたへの想いを、すっかり断ち切らせたはずでした。しかし、どこかに未練がましく残っていたのでしょうか。まるで野分の訪れのように、心が揺れています。あなたは、吹きつける逆風をどのような想いで受け止めているのでしょうか。

大学時代の私たちはいつも一緒。真美、私、柊、そしてあなた。四人はいつも行動をともにしていました。

私はあなたに感謝しています。今の私があるのは、実はあなたのおかげなのです。そのことを伝えたくて、手紙をしたためています。そして、あのときのあなたの質問にも答えたいと考えています。あの私の人生を変えたあなたの言葉……。