けれど、“『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は、ロック界の傑作であり、ビートルズの傑作ではない”そのような意見もあるのです。今からでもビートルズを聴こうと思っている人は、少なくないと思いますが、良いとこ取りしたいからといって、このランキング順に聴いたら……ヤケドします。
それは、世の中の大半の人のイメージしているビートルズと、先ほどのランキングの上位を占める作品は別物だからです。
では世の中の大半がイメージするビートルズ。ビートルズをどのように聴き始めるのがよいのか。簡単にではありますが二つご紹介致します。より面白く、ビートルズを聴くにあたって知っておいた方がよいこと。ビートルズの音の歴史は“初期・中期・後期”の三つの時代に分けられます。
初期・ポップなロックンロール。ノリが良く耳に残るメロディ。曲作りも互いに向き合って行うような共作が多い。四人はマッシュルーム・カットで、アイドル色が強め。
中期・ロックンロールをより芸術性の高い“ロック”へと進化させる。それはレコーディング技術の進化と共に、実験的な音や曲作りに挑戦し、ロックの可能性をどんどんと広げていきます。四人はヒゲを生やすなど、ヒッピー色が強くなり、初期のアイドル的な要素は消える。
後期・中期の技術に初期のサウンドを取り入れ“現代ロック”を完成させる。けれど、バンドに対し互いが外方を向き、ピアノやアコースティック・ギターをメインにしたソロ曲も増え、レコーディングもバラバラで行われる。四人は長髪にヒゲ、むさ苦しい見た目が格好良いと思われたのはこの頃からでしょう。
これがザックリとした初期・中期・後期です。この“初期・中期・後期”を理解しないまま聴くと、
「ビートルズはみんな好きでしょ。ビートルズも通ったよ」
このような発言や考えが強くなってしまう傾向にあるのです。もちろんこのような発言をさせるほど、有名な曲、良い曲が多く、テレビCMや、お店のBGMに使用されるなど、私達の生活に溢れているというのは事実なのですが、これらのビートルズをある意味で崇めすぎた発言は、
「本当にビートルズが好き」
というような人達からほぼ相手にされません。それは前者のような発言をする人ほど
「たいして好きじゃないでしょ」
と思われる傾向にあるからです。(前者を“ビートルズに触れた人”後者を“ビートルズ好き”とします)