次に、

「方向感覚が良い人は何人?」

の問いに、彼女の答えは2人でしたが、セミナー会場の結果は1人でした。目が見えなくなると、方向感覚がよくなるという都市伝説がありますが、そうでもなさそうです。とは言え、超音波が出ているのかと思うような「壁まで30センチ程ですね」と当てる人や、車にお乗せすると、曲がった方向や数と走った時間で、今どの辺りかを当てる人もいます。反対に超方向音痴な人もいます。最後に、

「テレビとラジオ、どっちをよく聞くと思う?」

という問いには、テレビが3人ラジオが5人と彼女は答えました。それが本当にその通り! こんなにテレビを楽しむ視覚障害者が多いなら、もっと副音声を充実させるべきでしょう。

クイズを続けて、点字ブロックができたのは何処? と聞くと、アリコさんはドイツ? と答えましたが、実は日本です。1965年に岡山県の三宅精一さんが発明しました。では、点字ブロックの種類はいくつあるでしょう? と聞くと、

「駅にはポコポコしたのがあるけど……」

と自信がなさそうです。一般の方の認識はその程度だと、彼女は何度も私に気づかせてくれます。画像を見せながら、JIS規格では、誘導と警告ブロックがあり、駅のホームなどでは警告ブロックと誘導ブロックを合体させたような内方線付点状ブロックという3種類があると説明しました。彼女は、

「ブロックを頼りに歩く方は、訓練してから外に出るの? 行く場所がちゃんとわかって出かけるの?」

と不安げに聞きました。ちゃんと訓練を受けて出かける人もいるし、徐々に見えなくなった人などは、いつから杖を持とうか迷っている人もいるので、私にはわからないと伝えました。

白杖=全盲とは限りません。ハッキリ見えていても視野が極端に狭い人や、霞がかかったようにぼんやりと見える人もいます。スマホの使用中に「あの人本当は見えている」と陰口を言われたり、食品に顔を近づけすぎて店員に注意をされて傷つく人もいます。

セミナー受講生のお一人から、「段々目が悪くなってきて、点字ブロックを頼りに薄氷を踏む思いで歩いているので、絶対に点字ブロックを邪魔しないでください! と伝えてほしい」と頼まれました。私がアリコさんにそれを伝えると、

「そんなに困ってはる人がいてはるのを知らん私は、ほんまにどうしたらええの?」

と聞くので、私たちの方から教えてほしいと言い続けるしかないのかなと答えて、またまた彼女を泣かせてしまいました。