子猫とボール
コンビニの娘
その日はネットニュース、メディア・ドット・ジェーピーのスタッフ、細井洋介が会社に出勤する日になっていた。コロナウイルス・パンデミックがやや下火になった後も、他のかなりの会社がそうであるように彼の会社もオフィスを二分の一に縮小して一部がリモート勤務になり、スタッフは週三日出勤のシフトで働くのが常態化していた。
その朝彼の上司の松野は、若者が腫れぼったい目をしてぼうっとしているのに気付いた。どうしたのか聞くとどうもしないと言う。しかしどうも様子がおかしい。
「ははぁ……君の悩みを当ててみようか?」
松野は彼を冷やかすように言った。
「女の悩み……どうだ、図星だろう?」
洋介は慌てて打ち消した。
「いや、そんなんじゃないです」
「そんなら何だ?」
「好きだ嫌いだといった問題じゃないんです。知り合ったのはひょんなきっかけだったけれど彼女のことが気になって仕方がない」
「ほら見ろ。やっぱり女の問題じゃないか」