チャレンジ精神の欠如

諺に、「可愛い子には旅をさせろ」と云うのがある。最近は死語になったのか、あまり聞く言葉ではないが、団塊の世代辺りはこの点については優等生だろう。地方に大学が少なかった事もあり、多くの学生が都会の大学に進学した。まだまだ円が弱かった時代にも拘わらず、海外に留学した学生も多く、また長期の海外旅行に出掛けた学生も多かった。

そして高度成長期に企業に就職し、“企業戦士”と云う称号を与えられ、積極的に海外にも出て行った。バブル崩壊後、団塊世代を非難する声をよく聞くが、彼等のチャレンジ精神には敬意を表したい。

一方バブル崩壊以降の若者は、海外に行く事を拒む人が多くなっていると聞く。数値データを見ても、欧米の一流大学に留学する学生が少なくなっており、そして企業に就職後も海外への転勤には消極的な若者が多いと聞く。しかも、海外旅行すら行きたがらず、そしてその傾向は男性の方が強いとの事である。

この様に、現代の企業活動において、このチャレンジ精神が段々無くなってきている。次に記載する“失敗を許さない文化と事なかれ主義”も相まって、判断が消極的になっている様に感じる。企業活動ではある程度失敗を恐れずに、常に新しい事にチャレンジしていかないと、企業そのモノが競争に負けてしまう。3勝7敗でも十分であるのだが、チャレンジしてこなかった結果が、今のGDPに表れている。

一方、今の東南アジアの若者は、より良い収入と生活を求め、何処へでも行く様なチャレンジ精神を持っている様に見受けられる。中国人やインド人をはじめ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、等々の国々の若者が世界に出て活躍し始めている。そしてシンガポールには、その様な若者が集まっている。日本が足踏みを続けていると、近いうちにこれらの国もあっと云う間に日本に追いつく可能性がある。

因みに脳科学者の中野信子氏によると、日本人には「チャレンジせよ」の言葉はNGとの事である。日本人は概ね心配性で正確性を重視するので、チャレンジする事を避ける傾向にあるらしい。

サッカー等のスポーツ観戦で、日本人の観客は失敗するとがっかりした声を出すが、海外ではチャレンジしないとがっかりした声を出すと云う。そのため、経営者は失敗に対して懲罰やがっかりした感情を出さず、成功した場合に褒める事のみを行う必要があるとの事だ。