佑介はピッチにいる。今日の相手は外国チームで皆体がでかい。佑介は、ドリブルで相手ゴールに迫った。ゴール前で相手チームの選手と競り合いになるが、体の大きな相手方の選手にぶつかられ、体の小さな佑介は吹っ飛んで、なんとゴールにぶら下がってしまった。動けない、と思ったところで佑介の目が覚めた。

何と、ベッドの手すりがパジャマの上着の背中の中に入っていて、ベッドの手すりからぶら下がっていたのである。

佑介は、「どうやったら、こんなことになるんだ」とぶつぶつ言いながら、パジャマのボタンをはずしていったら、まだボタンが二つ残った時点でちぎれて体だけ下に落ちてしまった。ドスンと大きな音がした。

裕美は、英介を起こしに行った時にその音を聞き、驚いて佑介の部屋に行くと、佑介が、ベッドから落ちた時に痛めたおしりをさすりながら、おはよう、と声をかけてきた。

今日は英介はそんなに早く出る必要はないので、子供たちと一緒に食事がとれる。

みんなが顔を洗って食卓に集まると、テーブルには、焼き魚に味噌汁という、いつもの品のいい朝食がきれいに並んでいる。昨日届いたばかりの一流店の高級な食材ばかりなのである。それを見て真理は、「えーっ、今日もお魚。たまにはパンと目玉焼きがいい」と文句を言った。

英介は、「何言ってるんだ、上等な料理だぞ」と言うと、佑介が「ママが作ったんだよ。上等って何さ」と言い、真理も、「ママのお料理も確かに、おいしいとは思うけど、私は、朝はパンと目玉焼きが食べたいの。どこのおうちだって、そうなのに」。

裕美は、「贅沢言わないの」とたしなめた。

英介は、パンと目玉焼きの方がずっと安いから、贅沢の逆だけどな。まあ、強いて言えば、「わがまま言わないの」だね、と思いながら苦笑した。

「僕もたまにはパンと目玉焼きがいいな」と佑介が言うと、真理も、「そうよね、外国の食事をとっていればお兄ちゃんだって、きっと外国人にも吹き飛ばされないわよね」

佑介は思った。

(こいつ、ほんとに、何で、僕の夢が分かるんだ)

食後、出かける前にみんなトイレに行く。

すると、トイレが流れていない、と佑介が文句を言っている。

「犯人は誰、パパだ」

「えー、そんなはずはない」と英介は異を唱えるが、真理が、「流してないなんて、汚い。パパ、やめてよ」と責め立てた。

裕美が、そっと英介に告げる。

「いつものトイレは、会社もマンションも自動で流れるやつでしょ。ここは家が古いから、自分で流さないと駄目なのよ。気をつけてね」

「そうか、気をつけるよ」と英介は答え、そして、佑介に、「今日は、朝からうんがついてよかったな」と言うと、佑介も、「そんなのついたら、死んじゃうよ。うんちなんて見ただけで、うんのつきだよ」と切り返し、「二人とも、似たもの親子ね」と裕美はあきれた。

そして子供たちに、「それで、今日の用意はできてるの」と聞くと、真理が、「大丈夫。あっ、そうだ、今日、持ち物検査があるの。ハンカチ頂戴」と言ったので、裕美は、「今、忙しいから。そこらへんにあるの、適当に持っていって」と答えた。

真理は、母の引き出しから、ハンカチを出したが、これは母の会社の物であった。「コシダ・ジュン」ブランドの物は世間では高級品と言われており、ハンカチもかなりの高級品なのである。

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