卒業式が終わり、僕たちは自動的に中学校へ上がった。
僕は変に目立ちたくなくて悩んだあげく、スカートを穿いた。中学校生活を送る僕たちの暗黙のルールは「普通」でいることなのだ。僕にとっての「普通」とは、体の性別に合った生き方をすることなのだ。いつかは向き合わなくてはいけない課題であることは知っていた。僕は少しずつ「普通」になることを決めた。
卒業式とは対象的に中学校の入学式は苦痛だった。スカートで登校する時、僕はずっと俯いていた。
もう一つの問題。それは友達だった。女として生きるには女友達が必要だった。
当時、僕の友達は海老沢だった。
彼といる時、両親はとても心配していた。僕にはその心配がウザかった。それから僕は両親と少しずつ距離を置いていた。
しかし、今後スカートを穿いて、海老沢と歩くことに抵抗があった。だから僕は前から僕を誘ってくれていた、神部さんや田川さんのいるグループに入ることにした。
十三歳の春、僕は陸上部に入部した。神部さんや田川さんもいたから余計に絆が深まった。
特にその時の神部さんの存在は大きかった。当時の僕は家に帰ることに嫌気がさしていた。なぜかは分からない。とにかく居心地が悪かった。思春期特有のものかもしれない。
僕は毎晩、遅くまで夜の町を彷徨い、大きな書店で朝から夜遅くまで過ごした。時には夜の日本海沿いを歩いた。不気味だったが家にいるよりはマシだった。そんな中で神部さんは僕の話を親身に聞いてくれた。
「行くところがないのなら家においでよ」
彼女は僕を家に招待してくれた。そこは居心地が良かった。温かい家庭で隠し事もないのにお互いのプライバシーには干渉しなかった。そんな家庭が当時の僕には羨ましかった。
あの頃、僕の日記を父に読まれたことがあった。それ以来、僕は完全に両親に心を閉ざしていたのだ。