夕方のテレビのニュースで葬儀の模様と校長のコメントが放送された。真一は成績も品行も申し分ない生徒だった、自殺の原因は不明だが、いじめなどがなかったか調査を続けている、と神妙な面持ちで記者団の質問に答えていた。

葬儀の翌日、クラス朝礼が終わるとすぐに左沢は学級委員とともに校長室に呼び出された。学級委員は長髪で痩せてメガネをかけた典型的な秀才の容貌をしていた。一方の左沢は、短髪で不良っぽさを漂わせ、秀才タイプにはほど遠い様子だった。しかし、実際の成績はすべての教科において左沢のほうがはるかに優っていた。また、女子生徒からの人気も断然高かった。

学級委員は、成績よりも人気のことが(しゃく)(さわ)るらしく、何かにつけ左沢に競争心をむき出しにした。校長室にそろって向かうこのときも、左沢より先を歩くことにこだわっているようだし、呼び出されたのが学級委員の自分ひとりではなく、左沢も指名されたことが不満らしかった。左沢は、そんな学級委員が(かん)に障ったが、素知らぬ顔を(つくろ)っていた。

校長室には、校長と教頭、それに左沢のクラス担任が待っていた。校長は、昨日のテレビに映ったときよりは、幾分生気を取り戻しているように見えた。

「ふたりを呼んだのはほかでもない、水沼真一くんの件についてだ」

左沢と学級委員が部屋中央に置かれた応接セットのソファに腰を下ろすと、対面に座る校長はすぐに話を切り出してきた。校長の隣に座る教頭は、神妙な顔をしてしきりにうなずいてばかりいる。担任は、持ち込んだパイプ椅子に腕組みして座っていた。

「真一くんの自殺の原因について昨日から調べているんだが、これといったものが見つからないんだ。それで、これは学校の問題ではなく、彼自身の問題、家庭を含めた私生活の問題だと考えている。そこで、彼の学校外でのことで何か心当たりがあれば聞かせてほしい」

言い終わると、校長はふたりの顔を覗き込むようにした。隣の教頭は相変わらずしきりにうなずくばかりであり、担任も腕を組んだまま口をヘの字に曲げたままでいる。

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