初夏
とある昼さがり、クラシックを聞きながら屋敷の庭をいじる。驟雨に驚くが、ままよと濡れるにまかせるも冷えるので切り上げる。明るい浴室で温かいシャワーは心地よい。衣を替えて爽快な気分で書斎に入る。
机上には友よりの文あり。急ぎ封を開けば懐かしき数々が心を満たしてくれる。持つべきは心友なり、ふと窓をみれば夕立は去り、早や薄日がさしている。庭の樹木に眼をやれば驟雨は雨滴となり、一滴一滴が青葉、青葉を伝わり落ちて時折キラッと露光る。思わず硯にて受けとめたい衝動が湧く。五滴六滴で硯海は満潮、落ち着いた心で墨をする。友への筆をとる、陽はまだ高い。
微妙なるもの
人間の暮らしとか営みには微妙なるものがある。自然で素朴なのがよい。現代諸悪の根源は成長至上主義にある。人物育成も経済も追求が余りに急過ぎた。組織の自己増殖の過程でそれらを失ったであろう殺伐たる現代人の悲哀が聞こえる。
微妙なる営みの中に人間らしい含蓄、風韻が生まれる。そのためには発酵と熟成の時が要る。それには自然になることよ、虚を以て養うことよと神の声が囁く。