【前回の記事を読む】保育園園長が語る、園児達を「感動させる」接し方とは?

「大東わかば保育園」の日々の保育実践から

朝のあいさつ ~子どもの「いま」の気持ちを理解する

「○○くん、おはよう!」「○○ちゃん、おはよう」と、毎朝、登園してくる子どもたちに声をかけます。

「おはよう!」のことばに、今日もまた健康な生命が与えられていることをよろこぶとともに、今日一日、たくさんの楽しみに出会えるようにとの気持ちを込めています。また、ともだちとの衝突や、自分のしたいことが思う存分にできないなどの苦しみに耐えるようにという励ましも込めています。

何かほかのことに気を取られている子や、機嫌が悪くて自分の殻に閉じこもっている子からは、「おはよう!」という声は返ってきません。

機嫌の悪い子に対しては、「おはよう」と声をかけることでその子の気持ちを少しでも引き立てられると思える場合は、もう一度「おはよう!」と声をかけます。しかし、その子の「いま」の気持ちを理解し、あまり押しつけがましくあいさつすることを求めないようにしています。

ところで「おはよう!」と声をかけられた子が、それに応えて「おはよう!」と言おうとするのを押しとどめて、「もっときちんと『おはようございます』とあいさつしなさい」と、子どもの自然な気持ちの動きをとめてしまわれる保護者がおられます。

子どもによい慣習を引き継がせたい、礼儀正しさを小さいうちに身につけさせたいという気持ちは理解できますし、この頃のことばの乱れを何とかしたいという気持ちは私も同じです。しかしまずは、一人の人間と人間とが出会う場面を大切にし、こころを開いて出会う楽しさを子どもたちに経験させたいのです。

よい慣習や礼儀正しさは、設定保育の場での最小限の指導と、職員と職員、保護者と職員、保護者と保護者がよいあいさつを交わしているところを身近に見ることによって、子どもたちは自然なかたちで身につけていくのではないでしょうか。

大人の権威や力を背景にして慣習を押しつけたり、礼儀正しさを強制したりするのではなく、一人の人間と一人の人間がこころを開いてあいさつを交わすところから、本当の意味での人と人とのつき合い方を子どもたちは学んでいくように思います。