【前回の記事を読む】地球の地下深部を探査する…「電磁波」で何がみえるのか?
第一章 地球の診断
一・五・二 密度
重力探査によりわかる物性は地下の密度分布です。密度は物体の体積一m3あたりの重さです。常温の水は、常温では約一〇〇〇kg/m3です。地下にある岩石は普通二〇〇〇から三〇〇〇kg/m3くらいのことが多いですが、鉄や銅を含む金属鉱物は、四〇〇〇から六〇〇〇kg/m3にもなります。そういう密度の高い物が埋没している所は、重力値の高異常として検知されます。
また、地表近くの緩く積もっている土や砂は、間隙に空気が含まれる場合は密度が小さく、地下水に満たされている場合は大きくなります。石油を貯留する層では間隙に天然ガスが含まれる場合は、密度が小さくなります。こうして重力異常を通して地下の様子を診ることができます。
一・五・三 磁化率
磁気探査では、磁気強度の分布により地下の様子を調べます。地下物質の磁気強度は、地下物質の磁化率(または帯磁率)に関係しています。磁化率は、物体を磁場の中に置いたときにどのくらいの磁気を獲得するかという指標です。
地球上の物体は、地球が持っている磁場である地磁気の影響下にあります。そのため、磁化率の大きい強磁性鉱物を含む岩石は強く磁化します。常温では無視できるくらいのわずかな磁化しか持たない物質は常磁性体といいます。
私たちの身近にある物質は、ほとんど常磁性体で磁化していませんが、身近にある強磁性を持つ物質として鉄があります。鉄の鉱石となる鉱物も強磁性体ですが、普通の鉱物より磁化率が百倍から千倍も大きく、したがって、地下に鉄製品や鉄鉱石が埋没している所では、高磁気異常として磁気探査により捉えられます。
一方、磁化している岩体の一部が、たとえば、雨水が浸透して風化したり、熱い温泉水などで変質を受けると、含まれる強磁性鉱物が消失して、そこは低磁気異常が生じます。