一・五・五 比抵抗比

抵抗値は電気の流れにくさを示す値で、流れやすさを表す電気伝導度とは逆数の関係になります。岩石を構成する鉱物粒子は常温では絶縁体であり、電気を通さないので、岩石中では電気は間隙流体を流れます。したがって、岩石の比抵抗は、間隙率や流体の中を電気が流れる経路の長さと、間隙を占める流体の比抵抗に依存しています。

一方、間隙流体が空気や石油など電気を流さない場合は、岩石の比抵抗は高くなります。地下では、間隙は地下水で満たされていて、それに含まれる塩分は陽イオンと陰イオンとに解離して溶けている電解質溶液です。比抵抗の値は、その塩濃度や解離度により決まります。

地下水にはいろいろな化学成分が溶けていますし、その濃度も幅が広いので、その比抵抗値は五Ωmから一〇〇Ωmくらいの範囲になります。また、海水はかなり低く〇・三Ωmくらいです。海水を含む場合は岩石の比抵抗値も低くなります。

溶液の比抵抗は、温度により変わるため、岩石の比抵抗も温度とともに変わり、高温になると比抵抗は低くなります。岩石の比抵抗は、間隙水の比抵抗に比例し、岩石の比抵抗を間隙水の比抵抗で割った値を地層係数といいます。この値は、間隙水の影響を取り除いた値と考えることができます。図2にさまざまな砂に対する間隙率と地層係数との関係を示します。

写真を拡大[図2]

この図のように、間隙率の対数値と地層係数の対数値を取ると、それらの関係はほぼ直線になることが知られています。砂の比抵抗値は間隙水の比抵抗値の三倍から六倍くらいの値を示します。ここまでは、粒子は絶縁体と考えた場合の説明をしましたが、金属鉱物の中には導電性を持つものがあり、それを含む場合は比抵抗値は低くなります。

粘土のような細粒の粒子は、粒子表面にイオンが吸着されてそこに電流が流れる表面伝導現象が起きます。それにより、粘土層は低比抵抗を示すことがあります。比抵抗には以上のような性質があるため、電気探査や電磁探査により地下の比抵抗分布から地下の様子を診ることができます。

低比抵抗領域は、間隙が多く水がたくさん溜まっている所と考えられますし、そういう所は透水性も高く水が流れやすいといえます。ただし、粘土が含まれて低比抵抗になっている場合は、透水性は低くなります。一方、高比抵抗領域は、水が少なく透水性も低くて水の流れを遮る所と考えることができます。比抵抗値は水に関する地下の様子を診るのに適しています。