過去、そして真実……
「――――ねぇ! 聞いてるの!?」
「ふん。そんなの、どうでもいい」
ついぶっきらぼうな言い方になってしまう。良くないとは思ってはいるが、どうしても抜けない自分の悪習。ただでさえ強面と言われているこの顔にこの態度。
明らかに不機嫌なように思われているだろう。祝日にわざわざ2人でショッピングモールに買い物に来ているというのに……。
「なんでもいいだろう。お前からなら、弘樹はなんでも喜ぶはずだ」
少しばかり罪悪感を覚えて、申し訳程度に呟く。そんな俺を見て、雪菜は『仕方ないなー』なんて笑う。めんどくさいなぁ、と。
どっちがだよ。弘樹のこと好きなくせに、未だに想いを伝えられず、誕生日だなんて建前がないとプレゼントすら渡せないお前の方がよっぽどだろう。
弘樹もだ。おそらく雪菜のことを好きだろう。なのに、未だに進展していない2人。めんどくさい。そんな雪菜に嫌々ながら付き合う俺も相当めんどくさい男だな……。本当に呆れてしまう。めんどくさいのは果たしてどっちだろうな。
「ん? なんだろう?」
急に周囲がざわめき出す。規則正しい歩行者の列が乱れる。戸惑いの音。かすかに聞こえる悲鳴。避難警告のアナウンスが流れる。従業員や警備員の案内に従い外に出る。外に出てみてみれば、原因は明らかだった。ショッピングモールから黒い煙が出ている。火災のようだ。
そんなことより、外に出たときから雪菜の姿がない。まずい! はぐれたか。焦る気持ちを抑えて電話をかけてみる。10秒ぐらいコールするがぜんぜん出ない。はやく出ろ!
焦ってしまう。
コールオンが止む。ついに繋がった。
「大丈夫か!? お前、今どこにいる?」
「……たすけ…………て」
「おい! しっかりしろ!」
何度も問いかけるが返事はない。まさか、建物内にいるのか!? 俺は押し寄せる人波に逆らい、来た道を戻った。
来た道、見たお店を確認して回るが見つからない。ここももうすでに煙が立ち込めているようだ。長居をすれば、俺も雪菜も危険だろう。はやく見つけて脱出しなければ。
だが、どこを探しても見つからない。しばらく探す。いつまでも見つからず、諦めかけたそのとき、遠くに横たわる人影を見つけた。急いで駆け寄る。それは雪菜だった。口元に手の甲を当ててみると、まだかすかではあるが息をしている。
雪菜を担ぎ、とりあえず煙がまだ充満していないところに避難する。適当に休めるところに寝かせる。意識があるかどうか、確認してみる。
「おい! 起きろ!」
必死に体を揺するが、うんともすんとも言わない。呼吸音が聞こえない。胸に手を当ててみる。心音すら聞こえない!?
まずい! このままでは! 心臓マッサージを試みる。
「たのむから起きろ! 起きてくれ!」
鼓動を再開する様子がまるでない。やばい。焦る。おい、目を開けろ。まだ何もしてないだろ。やるべきことも、やりたいこともなにも。プレゼントだって渡せてない。弘樹に伝えたいことだってあるはずだ。死ぬにはまだ早いだろ!
手を休めず必死にマッサージを続けるが一向に目が覚めない。なんでだ、なんでだよ! なんでこうなる!
ふざけるな!
俺はただ、雪菜が生きてさえいてくれればそれで良かった。傍にいてくれなくていい。嫌われようと関係ない。ただ、弘樹と一緒に笑いあって、それを俺に見せてくれるだけで良かったのに。それすらも許されないのか。
「たのむ! 神でも仏でも天使でもいい! こいつを助けてくれよ!」
ここにいるのは俺と雪菜の2人きり。どんなに叫んでも、願いは誰にも届かない。
「誰でもいい…………悪魔に魂を売ったって……いい」
その手を止め、すくんでしまう。くらっと少し目眩がする。とうとう火がここにまで来てしまったようだ。煙を吸ったせいで意識が遠のいていく。