決意
むかしむかし、ある日、独りきりの家が嫌で家出をしたことがある。当てもなくただひたすら歩き、あたりが次第に暗くなってきているのにずっと帰らなかった。
両親が仕事から帰ってきて、わたしがいないことに気がついたらしい。警察に通報したようだ。
あたりはすっかり暗くなって帰り道を見失ってしまい、途方に暮れた。両親が必死に探していることを知らなかったわたしは、どうせ自分がいなくなっても誰も気がつかないだろうなーなんて、ここで死ぬのかなーだなんて考えてた。
考えるほどに落ち込んでいく悪循環。いっそ死にたいとまで思ってしまった。
結果的にわたしはこうして生きている。弘樹が見つけてくれたからだ。わたしを見つけた途端の怒ったような泣いたようなあの表情。あのときの顔を未だに忘れない。
そのときはじめて気がついた。わたしには弘樹がずっと傍にいてくれたんだと。
その後、わたしの両親に弘樹が鬼のように怒ってくれたっけ……。
ん?
なんでいま、このことを思い出したんだろう。
ふとそう思ったが、やがて襲いかかる眠気に負けて、意識をそこで手放した。