第五章

オフィスやビルのエントランスを中心としたデザイン・施工管理業務を主とし、近年、デザインに力を入れており東証一部上場を成し遂げたばかりの中小企業。株式会社SUNDESIGNにデザイナーとして私は就職した。

同期は私を含めた十人で、営業、施工管理、デザインチームにそれぞれ配属になった。私がこの会社を選んだ理由は、入社一年目でも率先してデザインに携わることができると会社説明会で話を聞いたから。

「二次会まで一緒に行きません?」

入社前の顔合わせがあり、社長からの有難いお言葉をいただきながらの会食の後、私は佐々木雄大に声を掛けた。佐々木は私と同じデザイナー枠で入社した同期の一人。佐々木は私の言葉が聞こえなかったのか社長のもとへ駆け寄って、二次会会場までの道のり、始終話しかけていた。

一瞬目があったように思ったが、それほど気にするものでもないことだと他の同期たちと当たり障りのない会話をして後に続いた社長の自慢話を持ち上げ、褒めちぎる。

私は胡麻をするのが苦手だったが、愛嬌を振りまき、場の雰囲気に合わせるのだけは一流だった。満足気に帰ってゆく社長の背中を全員で見送っている間、私は家に帰って録画していた恋愛ドラマを観るのが待ち遠しくて、下げた頭を誰よりも早く上げた。

最後まで頭を上げなかったのは佐々木だった。私が足早に駅の方へ向かおうとすると、佐々木に腕を掴まれ引き止められる。

「社長が言っていたように仕事とプライベート一緒にするぞ。これから同期みんなで親睦会だ」

「え、今から? もう終電だけど」

「まだ仕事が始まるわけでもないし明日は休みだろ。お前らも行くだろ?」

同期たちもお酒が回っているせいか朝まで飲む気でいた。それでも私は「朝が早いから」と終電に乗った。

休日は田所さんが遊びに来る。都内への引っ越しも手伝ってくれた。家賃も払うと言ってくれたが、何かあって揉めた時のことを考えると丁寧にお断りをした。電車に揺られながら携帯を開くと同期のライン通知が溜まっている。飲み会で撮った写真がたくさん送られてきた。

長文のラインが何件か続く中、落ち着いた頃合いで「お疲れ様です。本日はありがとうございました」とだけ返す。新着ラインに「介護で明日は行けなくなった」と田所さんから連絡が入っていた。