(四)結婚観
「私は結婚を考えてもみなかったとか、あまりにも突然なのでとか、時期尚早だとか言うつもりはありません。しかし、だからと言って、結婚が未来にあって現在の付き合いがあるという考えは、本能的に拒否してしまうのです。私の、結婚というやっかいなものについての考えがわかっていただけなければ、何を言っても空論になってしまいます。
あなたの、結婚に対する考えというのは私にもよくわかってきています。恋愛→結婚とお考えになるだろうと私にだってわかります。
私の結婚に対する考えというものは、少し人と変わっているかもしれません。今までずっと自分の人生に入ってこないものと決めていた感があります。自信も期待も全くないし、世間知らず、幼稚なのかもしれません。
結婚というものは目標ではなく結果である。又、未来ではなく現在のどうしようもなくなってしまったものの積み重ねなのではないか。二人が共に愛し合って、一生という大きなものをその一瞬にかけても何ら悔いのない程の強さで、離れられないと確信した結果として結婚があるのなら許せるのです。
もしも私の人生に結婚というものが入ってくるのならば、その相手は沖田さん以外の誰でもないのです。一生ずっと一緒に苦労したいという事のみで定義するのならば、私の方がずっとその気持は強いのです。
私には恋愛の事をいけないと思う罪の意識があり、やめようと格闘しているうちに心の中での本能が変わってきた。惚れるのは悪い事ではない。一番大切なのは本能なのだから」
(42年1月 緒田啓子)