その年も夏から準備し、勉強し続けるJがいた。一一月末まで昨年同様の繰り返しが続いたが、勉強場所は図書館から自宅の四畳半の小さな部屋に変わっていた。

ここ二年ほど、夏から年末にかけての旅行は中止だった。旅行好きだったので、行かずによく頑張っていると自画自賛していたが、周りはどうだろう。二〇一九年一二月初めての日曜日がテストの日。前回と同じ場所。今回も受験者で混んでいた。

二〇二〇年一月合格発表日の一七日、通知ハガキは届かなかった。一日遅れてA4サイズの書類が入る郵便物がドサッと届いた。奥さんが運んできたので開封してもらう。いろいろな書類の中に合格証書が入っていた。

奥さんから、「よく頑張ったね、今回はパスと思っていた」と言われたが、本人はボーッとしていた。口角は上がっていなかったように思う。その時、なぜかわからないが、合格の実感はわかなかった。

その後、前日から用意されていたステーキとサラダが食卓に並ぶ。お互い「よかったね」「うん、よかった」と言いながら、ワインで乾杯。