諸刃の剣である抗がん剤の限界を知っておく

日本では抗がん剤が標準治療の中心的な存在です。日進月歩で次々と新しい抗がん剤が開発され、臨床に使用されています。しかし、あなたは抗がん剤に限界があることを知っていますか?

抗がん剤で治癒が可能であるがんの種類は非常に限られており、それ以外のがんは、延命か症状の緩和のみを目的に使用されています。

抗がん剤の限界はそれだけではありません。次のような問題が指摘されています。

・アメリカでは抗がん剤は増がん剤とみなされている

1988年、アメリカ国立がん研究所(NCI)は数千ページにわたる『がんの病因学』という報告書で、「抗がん剤は、がんに無力なだけでなく強い発がん性があり、他の臓器などに新たながんを発生させる増がん剤でしかない」と発表して世界を驚かせました。

アメリカのがん研究の最高機関が、抗がん剤は百害あって一利なしだということを認めたのです。実は、日本の厚生労働省もそのことを暗に認めています。『医薬品のがん原性試験に関するガイドライン』という文書があります。「がん原性試験」というのは「発がん性試験」とも言われます。

これは、製薬会社で開発された化学物質を医薬品にするために必要な臨床試験の後期に行われる安全性試験の1つです。ラットやマウスなど複数の動物に対して化学物質をほぼ生涯(2年間)投与し、臓器の変化などによってその化学物質の発がん性を調べます。そういう大事な試験が、実は抗がん剤では基本的に免除されているのです。

それはなぜか? ガイドラインには、抗がん剤に延命効果がある場合、二次発がんの懸念があることが明示されています。つまり、効果のある抗がん剤には「発がん性がある」ことが最初からわかっているので、がん原性試験を行うまでもないというわけです。

・がん細胞が薬剤耐性を獲得して抗がん剤が効かなくなる

どんな抗がん剤も永遠に効き続けるわけではありません。がん細胞が薬に抵抗力を持ってしまい、効果が出なくなるときが必ずやってきます。これを「薬剤耐性ができる」と言います。がん細胞は時間の経過とともに自然に薬剤耐性を獲得して、がん細胞がさらに増殖してしまう可能性があります。

1985年にNCIの所長がアメリカ下院議会で「抗がん剤による化学療法は無力だ」と衝撃的な証言を行い、抗がん剤の耐性遺伝子の存在を明らかにしました。この遺伝子は「反抗がん剤遺伝子(アンチドラッグ・ジーン:ADG)」と名づけられました。

抗がん剤はいっとき効いたとしても、使っているとやがて効かなくなり、別の種類の抗がん剤に次々と変えていかざるを得ません。そして、最後には使える抗がん剤がなくなってしまいます。

・重篤な副作用に悩まされることが多い

よく知られるように、抗がん剤には強い毒性による重篤な副作用があります。程度の差はあれ、副作用はほぼ必発です。体への負担が大きく、全身状態が悪い場合には治療関連死の可能性もあります。

従来からある抗がん剤は殺細胞性抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)と呼ばれ、がん細胞だけでなく正常細胞も攻撃します。それに対して、近年、正常細胞への影響が少ない分子標的治療薬や、がん細胞が免疫にブレーキをかける仕組みに働きかける免疫チェックポイント阻害薬が登場しました。しかし、これらも頻度は少ないものの、やはり重い副作用が現れるという欠点があります。