NICUに入院していた頃、手術についての話があった。
「1歳になる頃に、最初の手術を行います」
病気は治るものだ、という認識がある。けれどキミの辞書に「治る」という言葉はない。体の負担を少しでも軽くするために、何度かに分けて手術を行うことが必要だと担当の先生は言っていた。
ここに、跡が残る。生後11か月が過ぎ、手術の入院を翌日に控えた夜。普段と変わらない私の胸を、母はそっと写真に撮った。生まれて初めての手術の前、というのはつまり、体に手術の傷跡がない最後の姿だということと同じだ。
心臓の手術では、首の下から、みぞおちの上あたりまでメスが入る。初めての手術が終わり、たくさんの管に繋がれた私は、家族のもとに戻った。けれど「終わった」のではない。今回の手術は、生きていくためのまず1つ目の目標なのだ。
手術と、その後の回復のための入院は1か月間。お昼の間は面会ができても、夜は柵の高いベッドで過ごし、目が覚めてもママはいない。といってもその頃のことは全く記憶になくて、ベッドの柵にかけてあったおむつを引っ張り出して遊んでいたらしいことも、私は覚えていないのだけれど。