「N合宿」

各地区から参加した親子は駅に集合します。集合場所に連れて来る迄も親は大変な思いをして多動の子どもを連れて来ています。そこから近くの川で川遊びをしますが、皆、勝手な行動をするので、川では目を離すことは出来ませんが、色々体験させたいという親の熱い思いから企画しました。

その後、バスに乗りケーブルカーに乗り、歩いて宿に着きます。着いて早々、窓という窓、ドアというドアにボランティアさん達は分担して見張りに入ります。皆、多動な子ども達、山の中へ脱走されたら大変です。

着いたら、お昼ですが、落ち着いてゆっくり食べている暇がないので、宿にお願いしていたカレーを食べます。そのご飯を盛り付けることは子ども達に教え、お手伝いさせます。ご飯を盛り、各テーブルに運ぶまでやらせます。暇だと逃げ出してしまうからです。

[写真1]食事の用意は子ども達に手伝わせる

昼食後の体力作りのためのハイキングは、ボランティアさん達に任せます。急な坂道や階段を登り、険しい山道を歩かせました。

山登りに行っている間、親達は、N先生を囲んでの勉強会です。「N合宿」がスタートした年、先輩のお母さんが話された情報がとてもショックでした。先輩のお母さんが、自閉症親の会の「親子合宿」に参加した時の話を報告しました。

そこで目にした出来事は、私達の先輩となる高齢の親が、やせ細り腰も曲がっているのに、親の背丈を超え、太った自閉症者の子ども(成人)をお風呂に入れるのに、洋服を脱がせてやり、身体も洗ってあげなければ、一人では何も出来ない状態だったそうです。昔の障がい者に対する考え方は、温かく見守るだけで、何も教育されて来なかったのです。

報告後、先輩のお母さんは、「私達、親が若いうちに、NHKの親子合宿で学んだように、子ども達を特別扱いしないで普通に接し、基本的な生活習慣だけ出来るように教育していこう。そして、年を取ったら、親も楽が出来るように」とまとめ、報告を終えました。

その報告を聞き、参加者は皆、体力のある若いうちに頑張ろうという気持ちになりました。先生からの情報だけでなく、先輩の親達からも情報を得られるこの合宿は、親の勉強となり、子どもにも集団遊びや体力作りの場となり、1年も欠かすことなく続くようになっていきました。