【前回の記事を読む】【小説】父にレイプ被害を打ち明ける決心。「聞いてほしいことが…」…
一闡提の輩
直之はいつも長湯だったが、娘のことが気になって仕方がなかった。その日はシャワーだけで済ませ風呂場を出た。直之は、お風呂から上がりバスタオルを首にかけながら、寝間着姿で瑠衣の部屋に入った。
入るなり、直之は目を疑った。暗がりの中、瑠衣はなんと“全裸”で立ち尽くしていた。
思わず直之は、「瑠衣。パジャマを着なさい!!」と叫んだ。
「お父さん、このままでいいの。私を抱きしめて!!」と瑠衣は涙ながらに父の胸に飛び込んでいった。
「とにかく、パジャマを着なさい」と直之は突き放した。
「ダメなの。何も言わないで私を抱きしめて。お願い。お願いだから……」と瑠衣は縋すがる思いで抱きついた。
「どうしたんだ。どうしたんだい?」と直之は何度も聞き直し瑠衣をはねつけた。
「お父さん、わけなんてどうでもいいの。お父さん、好き。大好き。どうしても抱きしめてほしいの……」と瑠衣は哀願した。
「そんなこと。そんなこと許されるはずないだろう」
直之は動揺していたが、それでも冷静さを失わず瑠衣を追いやった。
「私どうなってもいいの。お父さん。お父さん、助けて。助けて」と泣きながら直之の両足にしがみついた。
不意を突かれた直之は瑠衣の頭をなで、「瑠衣。ここは冷静になって話をしよう」と言って瑠衣の顎に手をやり顔を見た。
「とにかく、何でも聞くから、話してごらん」と直之は瑠衣をなだめた。
しばらくたって、「私、『レイプ』されたの……」と瑠衣はつぶやいた。
一瞬、二人の間に張り詰めた空気がその場を支配した。
「どういうことだ」
直之は、なんのことだかわからず戸惑った。
「坂東先生の家で、レイプされたの……」と瑠衣は涙ながらに訴えた。