小説 『天命愛憐[注目連載ピックアップ]』 【新連載】 せと つづみ 「慰謝料は、会社が提示した額の倍は要求した方がいい。」落雷事故にあって入院している最中に話しかけてきた男は… 空は鈍(にび)色の厚い雲に覆われていたが、わたしはその向こうに広がっているはずの、青く澄んだ空を思い浮かべていた。病院に入院してから二日が過ぎ、全身の痛みがかなり引いて、普通に歩けるようになったので、わたしは外に出てみることにした。一階の待合室を通るとき、隣国フルグナとまた戦争になるのではないか、と話している男の人たちの声が聞こえた。「政治体制や思想が全然ちがうんだから、どうにもならないよ……」…
小説 『差出人は知れず』 【第19回】 黒瀬 裕貴 「この子にこれ以上の辛酸を舐めさせてはならない」息子夫婦を事故で亡くした老人。“たった一人の孫”のために彼は…… 【前回記事を読む】妻を先に亡くした親友。「お前、奥さん亡くして何年経ったと思ってんだ」「俺はもう一人でいい。それでも寂しくなったら…」ある日突然息子夫婦を喪うという悲劇に見舞われた良三だったが、まだこの世の穢れを知らないこの子にこれ以上の辛酸を舐めさせてはならないと、悲しむ暇もなく妻と若菜の子育てに奔走した。年金生活の身ゆえに暮らしは決して楽なものではなかったが、そんな姿を見かねた景浦も不器用な…