【前回の記事を読む】【小説】「私は卑弥呼です。あなたたちの手を借りたい」
第四章【邂逅】
「そうですね。基礎知識として必要があるでしょう。まずは先ほど言ったように私には心が読めると同時に、未来と天変地異を含む天候がわかり、その上透視能力をも兼ねた予知能力が極めて強力です。ただしすべてに対応できるかというとそうでもないのです。
わかりやすく言うと磁場の変化などによるノイズや、親族など身近過ぎるが故に起きるハウリング的な障害などがそれです。また鍛錬と経験も関係してきます。というわけで身近なことについては、基本的に意図したものでなければ読むことはできません。灯台下暗しということですね。
また少ない事案ですが、同等の能力者に関する情報の取得は不可能と言ってもいいでしょう。わたしたち一族には強弱に関わらず何かしらの能力があり、ただ気づかないでいるのがほとんどです。あなたたちの能力についてはおいおい説明するとして、今はこれくらいでいいですか」
「OKでーす、姫様」
軽い口調で明日美はウインクしながら言った
「次に復活に至った経緯を話します。先ほどの続きですが、私はこの世を去る時が近いと悟り、復活の準備を整えたと言った、そのもう一つが、核となる秘技です。それは、すでに毒に侵された体を捨て、意思だけを残すという最後の手段でした。
当然ながらそんな都合のよいことが簡単にできるはずもなく、それには一旦長い眠りにつく必要があり、しかも覚醒するには強大な力が必要となるのです。その力を生み出すのが前方後円墳の役割なのです。
その話はこの後に回すとしますがよろしいですね。それから私は眠りにつく前に、とある事案を確認するとともに、その長い眠りの過程における危険性を回避すべく、自分の魂を銅鏡と勾玉との2つに分けて自らを封印したのです。つまるところ分霊と呼ばれるもので、私の場合はこれら2つになった魂は、互いに呼び合い連動して覚醒するのです。
その一方の銅鏡を天見家に託し、もう一方の勾玉が柩の中という状態でしたが、本来の力を取り戻すには最終段階として、その2つの魂の合祀(ごうし)を行わなければなりません。その作業をお願いしたというわけです。お陰様でこうしてあなたたちの前に立つことができています」
ここでちょっとした拍手が起きた。