佳津彦は用意していた折り畳み式の椅子を背負子から2つ取り出した。さすが家訓の伝承者だ、ご先祖様の忠実な下僕と化している、しかしどこまで筋書きができていたのだろうか、あまりにもこと細やかに指示が行き届いている。卑弥呼がこれからやろうとしていることも、すでに計画済みの物事なのかもしれないと、思いつつも明日美は佳津彦をからかうように、「わぁ、お父さんの背負子にはなんでも入っているのね。何かもっと面白い物を出してみてよ」あっけらかんと言い放つ。

二人は椅子に座りレオは明日美の膝の上に、こうして説明会は始まっていくのだった。

「まずは私の墓がなぜこの地にあるのかを説明しましょう。詳しい経緯は話しが長くなるので、先ほど言ったように、後ですることとします。端的に言えば逃げてきたのです。志を同じくする者たちとともに、戦いながらたどり着いた場所がここだったというわけです。

この地は後に蝦夷と呼ばれた人々の居住地で、私たちに敵対する勢力に匹敵するほどの強力な集団がありました。同じ目的で私たちの友軍として戦う状況に至り、私につき従った同志と合わせると、敵を圧倒する規模の兵力になったのです。そこで戦いの準備が整い反撃に出ようという時に、私は内通者に毒を盛られ、命を落としかねない危機に陥り、それと同時に反撃を指示したのですが……。

私はご存知の通り人の心が読め、天候も限定的ですが未来も予測できました。しかし油断だったのですね。暗殺を指示した者は私と同等の力を持ち、情報漏洩防止的なものが仕掛けてあったのです。面倒くさいのでこれからそれをシールドと呼ぶことにします。そのために内通者を見抜けなかったのです。

そして私は自分がこの世を去る時が近いと悟り、あなたたちに出会う日がくることを予知し、一旦眠りについて覚醒、復活するための準備をしていたのです。その一つが眠りについた後の安置場所やその施設、または方法などで、それを残された者たちに託し、そうして完成したものが、今、私たちがいるこの地下墳墓というわけです。正しくは死んではいないので墓ではないのですが……。仕方ありません、この場合ややこしくなるので墓ということにしましょう。その詳しい話は復活の説明でさせていただくこととします」

ここで明日美の初の質問である。やや緊張気味に聞く。

「まずは姫様の能力を詳しく聞かせてください」

卑弥呼は無表情のままで答える。