【前回の記事を読む】「で、大木を殺したのは誰だよ」携帯エアリーが明かした真実とは!?
携帯エアリー
翌日、省吾は若宮の事務所に行った。しかし、もう若宮はそこにはいなかった。昨日逮捕すればよかったのに逃がしてしまったのだ。しかし、昼過ぎ、若宮が警察に出頭した。自首するつもりだろう。
「若宮、昨日は悪かったな」
「いいよ。全部話すよ」
今度はエアリーなしで話をすることにした。省吾は若宮の親友として信じたかったのだ。他の刑事には席を外してもらって、若宮と省吾の二人で話した。
「酒は抜けたか?」
「ああ、午前中は二日酔いだったけどな」
「そうか」
「俺が大木に会ったのは三年前。二十七の時だ」
「そうか」
若宮は情けなそうな顔をして、省吾に言った。
「二十二で就職して二年で辞めてさ、そのあとはアルバイトや雑用、工場の流れ作業をパートのおばちゃんちとやったりしたけど、一応大学出てるわけだし、プライドあってさ」
「なるほど」
「職安でいい仕事あるかどうか探したりしたけど、なかなか見つかんなくて、職安の外でタバコ吸ってたんだ」
「そこに大木がいたわけだな」
「そうだ!」
「大木は無職の人間を職安から受け子に誘ってたのか?」
「受け子とは限らないよ。いきなりかけ子のやつもいるし、前には出し子もいたよ。ほらATMから金出すやつ」
「知ってるよ」
「それもあったみたいだけど、カメラに顔映るだろ?」
「まあな。捕まるよな」
「それでさ、俺は大木に誘われて受け子やって、二、三回で辞めようと思ったんだ」
「辞められないだろ?」
「うん。それで、かけ子に回されて、そっちの方が顔も見られないわけだし、声は録音されたとしても、前科がなきゃ警察も俺まで辿り着かないと思ったからさ」
「それで、どこからかけてたんだ」
「アパートやラブホやネカフェやいろいろだけどさ」
「よく捕まんなかったな」
「なんか、場所貸す方もわかってるようだったよ。金もらった不動産屋とかがさ、警察から聞かれたら箱長やオーナーに連絡が来るようになってるんだ」
「それで、捕まんないで逃げるわけだな」
「そうだ」
省吾には若宮の言っていることがウソとは思えなかった。そして、話は続いた。
「それから、お前は箱長とかにはならなかったのか?」
「俺はそんなに成績よくなかったし、あっ、OSのだよ」
「OS? オレオレ詐欺の成績ってことだよな」
「うん。それで、箱長とかオーナーがいない時はみんなでどうにか逃げようと考えたんだ」
「その時の箱長が大木か?」
「うん。オーナーは半年前に殺されたんだ」
「誰に?」
「複数で。俺もその中の一人だ」
「えっ? ……それはあとで聞くよ」
「うん。それで、みんなでどうやったら逃げられるかってことになったんだ」
「逃げたやつもいたのか?」
「その逃げたのが、殺された渡辺敏夫と松岡直子の娘だよ」
「えーーっ?」