つつましく暮くらす
孔子は弟子したちに講義をしたり、対話をしたりするかたわらで、自分自身の日常生活の中でも仁の心を実践するように心がけていました。孔子は食べ物を得るために自分で魚を釣ることもありましたが、欲よくば張って、網を投げて魚をいっぺんにたくさん獲るようなことはしませんでした。欲張らず、多くを殺さずに、自分が食べる分だけしか釣らなかったのです。
また、飛んでいる鳥を弓で射ることはありましたが、木にとまって休んでいる鳥や、巣の中で寝ている鳥を弓で射るようなことはしませんでした。魚や鳥といえども、その命や生活をとても大切にしていたのです。
そして生活はつつましく、無駄ないように努めていました。食事は贅沢なものではなく、いつも少ない量のごはんと、少しだけのおかず、そして水を飲むだけですませていました。ただ贅沢こそしなかったものの、食べるものの質にはこだわっていました。
お米は新鮮なものを丹念に精米し、古くなって味が変わったようなごはんは食べませんでした。肉や魚も、日がたって腐くさりかけて色が悪わるくなっているものや、匂いが悪くなっているようなものは口にしませんでした。売っているものを買って食べるのではなく、できるだけ自家製ものを食べるようにしていました。