【前回の記事を読む】「徳のある人は実践する難しさを知るからこそ慎重になる」
仁を身につけるには
弟子の子張は、とても物静かで人の上に立つ性格ではありませんでしたが、研究肌で、つねに真実を究めようと努力していました。そんな性格だったので、曖昧なことが嫌いで、なにごとにつけても、細かく具体的に理解しないと気が済まない性格でした。
子張は、師匠の言う仁が、とても理解できるものの、何をどうしたら仁を身につけられるのか、よくわからずに悩んでいました。そこで仁の身につけ方かたを師匠に尋たずねました。孔子は答えました。
「子張よ、大事な要点は五つある。一つは、やはり謙虚で礼儀正しい態度だ。なぜなら、謙虚で礼儀正しい態度で人に接せっすれば、誰からも尊敬され、人からあなどられることはないからだ。
二つ目は、心の広い寛大さだ。おおらかで、心の広い人は誰からも好かれる。三つ目は、嘘をつかない誠実さだ。誠実さは人から信頼される。人から信頼されると、自然と、重要な仕事や責任の大きい仕事を任されるようになる。
四つ目は、勤勉で怠けないことだ。手抜きをせずに、一生懸命に仕事に励めば、必かならず成功するからだ。五つ目は、利益を分け与えること。自分だけ豊かになろうとしないことだ。周りの人の助けがあってこそ、自分の人生がある。欲深くなってはいけない。つねに感謝の気持ちで、恩返しを心がけることだ。そうすれば、誰もが君についていこうという気持ちになる」
子張は、師匠の講義を聞いて、頭の中のもやもやした霧が晴はれていく思いがしました。そして、この五つの戒めを自分の人生における信条としたのでした。