【前回の記事を読む】『このまま君だけを奪い去りたい』あの娘にはどう聞こえた?
スタート
ー美貴との再会から一か月―
あの奇跡的な出会いから俺たち二人は付き合うことになった。俺のほうは問題ないが、彼女のほうは翔太くんもいることから、彼女の両親を説得することが困難を極めた。彼女の下へと上京するわけだが、娘をいろいろな場所へ連れ回すことなど到底許し難いと頑なに交際を断られた。しかし、懸命の説得で交際を申し込んだ結果、「孫も一緒に連れて行くなら交際を許可する」と言われた。
あの夜の着信は美貴からだった。おそらく友人から俺の電話番号を聞いたのだろう。電話で一時間ほど喋った。「また電話してもいい?」ということだったので、「全然構わないよ。むしろ大歓迎」と返し、それから定期的に連絡し合い交際を始めた。
俺は毎週日曜日に上京し、翔太くんと三人でショッピングモールやゲームセンターで遊んだりした。シングルマザーでいた時間が長かったことから、親子の結束力が他の親子よりも堅かったため、翔太くんの反抗期は皆無に等しいくらいなく、お互い過度なストレスもなく交際は順調に進んだ。無論、翔太くんのサポートも忘れず、学校からの宿題があれば夜遅くまで勉強に付き合った。
「ごめんね。いつも遅くまで付き合ってもらって」
「な~に。気にしなくていいよ。俺も頭が活性化するよ。昔、必死で勉強したことを思い出すよ」
「じゃあ、もっと勉強に付き合って(笑)」
「できるところまでだけどね。ところで、今後のことってどう考えてる?」
「まだ一か月しか経ってないからなんとも言えないわ」
「俺がサラリーマンだったら心配しなくてもいいんだろうけど。かと言って、いまさら車いじりにも戻りたくないし。体がきつくても今の仕事のほうが性に合ってるからさ。まあ、まだ付き合って間もないから、今後のことはじっくり考えよう」
「そうだね。いろいろと考えてもらってホントにありがと。私は大丈夫。両親には私からも相談するし翔ちゃんへも話しとくから。あ! もうこんな時間。終電過ぎたんじゃない? 泊まってく?」
「じゃあ、お言葉に甘えて。ホテル代もバカにならないんで」
「私、ソファーで寝るからベッドを使っていいよ」
「ありがとう」
「いえいえ。お互いさま。電気消すね。オヤスミ」