一夜明け目が覚めると、彼女が早く起きて朝食を作っていた。翔太くんは着替えを済ませ食パンをほおばっていた。俺は歯を磨き、タオルで顔を拭いた。
「おはよ。ご飯できてるよ」
「ありがとう。ソファーだったから眠れなかったんじゃない?」
「大丈夫。一日くらい平気」
「そっかあ。ホントにありがとう」
パン食の朝食は久しぶりだ。整備工場に勤務していた頃は、いつも決まって朝はパンだった。今の田舎暮らしでは米が主流だ。でも、泊めてもらったのにわがままは言えない。俺が作る朝飯より、彼女が作る朝食のほうが愛情の『スパイス』がかかっていて美味しかった。
朝食を食べた後、近くの駅まで送ってもらい電車に乗った。帰り際に手を振り「気をつけてね」と一言。俺も「君こそ運転気をつけて」と返した。新幹線と電車を乗り継ぎ、我が家に帰ってから彼女にメールを送った。すぐ返信が届き、『昨日もどうもありがと。ゆっくりと体を休めてね』と感謝の文字が綴られていた。とても気配りが利き、そして愛おしい、俺にはもったいないくらいの存在だった。
季節が夏に移り変わろうとしていた頃、夏野菜の収穫の始まりを迎え俺はとても忙しかった。あまりにも忙しかったので、彼女に相談し上京する回数を減らした。それでもメールや電話でお互いに世間話や悩みごとを相談した。
「毎日忙しくて会えないわねえ」
「しょうがないさ。それより体は大丈夫? 俺らそんなに若くないんだし、ここで無理がたたったら取り返しがつかないからさ。寝る時はあまり体を冷やさないで寝るようにね」
「心配してくれてありがと。ホントに君っていつも優しいね。いけない! もうこんな時間! じゃあ、オヤスミ」
「オヤスミ」