【公企4県と独法5都県の比較結果】

(ア)公企の独法化による地方自治体年度負担額の削減額は平均で約35.0億円

病床数100床当たりの自治体年度負担額は、公企平均が約12.2億円(平均病床数264床換算で約32.2億円)、独法平均が約8.9億円(平均病床数297床換算で約26.4億円)と独法の方が約3.3億円も負担額が少ないという結果であった。また、もし公企が独法化して独法平均の年度負担額で運営できたならば、全体でどの程度負担額を削減できるのか試算したところ、公企平均で約35.0億円、削減額が最も大きいのは埼玉県の約87.6億円、次に千葉県の約75.9億円で、逆に茨城県と群馬県はそれぞれ約16.5億円、約7.2億円の負担増という推計結果であった。(表4)

(イ)公企の独法化による資本金の削減額は平均で約88.3億円

資本金について100床当たり出資額を算出したところ、公企平均が約15.2億円、独法平均が約7.1億円で独法の方が約8.1億円も少ないという結果であった。また、公企の独法化による資本金の削減見込額については、公企平均で約88.3億円、茨城県約67.1億円、群馬県約39.1億円、埼玉県約203.9億円、千葉県約43.1億円という推計結果であった。(表4)

資本金額に大きな差が生じる要因としては、収益収支が大きな赤字の自治体は赤字補填対策として大きな資本金額の確保が必要であるが、収益収支が毎年黒字を確保できる又は赤字額が少ない自治体は、少ない資本金額でも病院運営に支障がないという事ではないかと思われる。参考までに、100床当たりの資本金は公企4県が全部10億円以上に対し、独法は神奈川県が約8億円、山梨県と長野県に至っては約0.3億円と公企に比べて非常に少ない額となっている。

(ウ)公企の独法化による全体運用額の削減見込額は平均で約123.3億円

全体運用額の削減見込額は、茨城県約50.6億円、群馬県約31.9億円、埼玉県約291.5億円、千葉県約119.0億円、公企平均では約123.3億円という推計結果であった。(表4)

(エ)純粋医業収支も独法の方が100床当たり約2.3億円良好

経営収支の健全性の評価指標である純粋医業収支では、100床当たり公企平均が約6.3億円の赤字額に対して独法平均は約4.1億円の赤字額であり、独法の方が約2.2億円赤字額が少ないという実績であった。また、参考までに唯一黒字となった病院も独法の山梨県立中央病院で100床当たり約1.0億円の黒字という実績であった。

(オ)公企の赤字額増加は独法の約6.4倍

貸借対照表の利益剰余金について、直近5年間(平成26年度~令和元年度)の実績を調べてみると、独法の有効性は一層明確になってくる。全体の病床数は公企が4,221床、独法が4,462床とあまり変わらないものの5年間の利益剰余金の増減状況を見ると、独法全体で約58.4億円の赤字(累積欠損金)増に対し、公企全体は約374.4億円の赤字増となっており、約6.4倍も赤字が多いという状況になっている。具体的には、公企の埼玉県約225.1億円増、千葉県約127.6億円増、群馬県約18.8億円増、茨城県約2.9億円増に対し、独法は神奈川県約81.0億円増、東京都約26.9億円増、長野県約0.9億円増となっており、唯一独法の山梨県だけが約50.4億円の黒字増という状況であった。(表5・6)

以上のとおり、関東甲信越管内の8都県の経営実績について、公企と独法の比較を行った結果においても明らかに独法の方が良好であり、地方自治体の年度負担金も資本金も大幅に引き下げられる可能性があることを確認できた。