僕は自分が何者かわからなかったが深刻には考えなかった。草(そう)太(た)は生まれてくれただけでいいんだ。父が言ったんだもの。父は西洋美術史家だった。僕は小さい小さい自分を天使のようなものだと思っていた。四人姉妹の弟だった。一番上の姉とは十五、すぐ上の姉とは三つ離れている。母は諦めないで男の子ができるまで頑張った。親父はそう言うが、親父の方が頑張ったかもしれない。僕が女の子だったらまだ頑張った? …
[連載]フィレンツェの指輪
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小説『フィレンツェの指輪』【第14回】今村 五月
恵まれた環境の中…家族に愛されて育った男が抱える不器用な恋
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小説『フィレンツェの指輪』【第13回】今村 五月
激しく後悔し、嫉妬し、絶望した…「誘わせたかった」僕の狡さ
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小説『フィレンツェの指輪』【第12回】今村 五月
「会いたかった…ずっと、一人?」「ええ…結婚するんです」
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小説『フィレンツェの指輪』【第11回】今村 五月
【小説】人は人を思う気持ちだけで繋がる…そう信じた母の姿
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小説『フィレンツェの指輪』【第10回】今村 五月
「なんで、こんな男と結婚したの?」妻の驚愕の答え
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小説『フィレンツェの指輪』【第9回】今村 五月
僕は彼女を捨てたから、1人で幸せになるなんて許されないんだ
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小説『フィレンツェの指輪』【第8回】今村 五月
死ぬまで一緒なんて、紙切れ一枚で保証できないでしょう?
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小説『フィレンツェの指輪』【第7回】今村 五月
「僕の、女房になって」男の微笑は優しくて女性的だった。
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小説『フィレンツェの指輪』【第6回】今村 五月
「……エッチな感触だ」大胆でいいんだろ、ビーチは。
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小説『フィレンツェの指輪』【第5回】今村 五月
「知り合う前は、映画ばっかり観ていたけれど…」八汐の告白
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小説『フィレンツェの指輪』【第4回】今村 五月
「あなたといると息苦しくない」長閑な時間、通じ合う2人は…
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小説『フィレンツェの指輪』【第3回】今村 五月
「いいよ、あなただから」名前を知らない2人の知られざる関係
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小説『フィレンツェの指輪』【第2回】今村 五月
続く大雨、バスもなく…そこに現れたのはまさかの人物だった
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小説『フィレンツェの指輪』【新連載】今村 五月
棚板が崩落…「気に入って買ったのに。」決死の覚悟で赴いた先
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