【前回の記事を読む】父を交通事故で、母を癌で亡くした。祖母には感謝しかないけど、こういうハレの日に自分の環境を呪ってしまう。小さな門をくぐると、両端には色とりどりの花が咲き誇り、芳醇な香りを清らかな空気に混ぜていた。自然から受けた恩寵の全てを凝縮したような、濃厚なその香りを鼻から吸い込んで、体中に巡らせながら歩く。今は僕たち以外に、客はいないみたいだ。ツタが寄り添う煉瓦造りの家。花屋として利用す…
[連載]なでしこの記憶
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小説『なでしこの記憶』【第4回】坪井 聖
花屋の店先、彼女の額は汗ばみ、髪先に伝う水滴は艶を放っていた。阿呆になった僕の目は制御を失い…
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小説『なでしこの記憶』【第3回】坪井 聖
父を交通事故で、母を癌で亡くした。祖母には感謝しかないけど、こういうハレの日に自分の環境を呪ってしまう。
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小説『なでしこの記憶』【第2回】坪井 聖
「は? 何だよその単純で煩悩だらけの不純な理由は!」バスケ部に入る理由を聞いてあきれた。
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小説『なでしこの記憶』【新連載】坪井 聖
「病床の母が喜ぶから」ただそのために、描いていただけ。かつて天才と言われた中学生男子の現在。
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