あの大きな目を更に見開いてブルブル震える姿に、私は傍らで泣き叫んで、必死に名前を呼んだ。彼はその時は戻ってきてくれたが、憔悴しきっていて、更に悪化したことは明らかだった。パートナーは彼に、レンタルの酸素ボックスを用意した。幅一メートル程、奥行きと高さが六十センチ程のアクリルの透明な箱である。火気厳禁だが、リビングに置いたので、その辺の問題はない。温度計と酸素濃度の計器がついていて、時々チェックが…
[連載]「彼」とのこと
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エッセイ『「彼」とのこと』【第4回】岡林 由希子
彼は旅立って行った。十三歳だった。私は生前、滅多に触らせてもらえなかったほっぺを撫で、彼に別れを告げた。
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エッセイ『「彼」とのこと』【第3回】岡林 由希子
右手に障碍のある愛犬。ある日、裂傷を負い、歩くことが難しくなった。右手が引っ掛かるような足の運びで…
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エッセイ『「彼」とのこと』【第2回】岡林 由希子
愛犬との騒がしいけれど愛しい日々。それは、永遠に続くかと思われた幸福だった… 。九年目の夏、彼は体調を崩した。
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エッセイ『「彼」とのこと』【新連載】岡林 由希子
血統書付きの血筋をもつ「彼」に心臓をブチ抜かれ、恋に落ち、夢中になった私