【前回の記事を読む】ハレンチの撲滅を試みる夜の騎士「ナイト・ナイト」が現れた!
ハレンチの敵
やりきれない夜を無理矢理眠り込んで朝を迎えた風太は勤めている会社に向かった。
彼が勤めているのは某大手出版社である。この出版社は主に漫画や小説を中心に出版しており、映画化やアニメ化された作品も数多くある。マイナーアニメ好きにも知られない真のマイナーアニメとして有名になれない「みかんウィング」の原作もこの出版社から生まれたものだ。
風太は編集者の一人として何とかボロを出さないように今日も努める。しかし彼は天性のボロロン坊やだ。人のかかとをしょっちゅう踏むし、編集長室に少しハレンチな漫画を置いて出てきてしまったこともある。コピー機の扱いを間違って個人的に作成した美人な後輩の変顔写真集が、永遠とコピーし続けられる事態に陥ったこともある。
「アレハシンドカッタ」
と彼は語る。九官鳥もそう言ったほどだ。
それ以来、その美人な後輩はたびたび風太に阿呆を見るような目線を送り、ヒシヒシと蔑むようになった。当然、上司とも思っていないだろう。しかし一部男性職員からの評価はグンと上がった。
そしてムカツク副編集長に出すコーヒーはコンビニで買ってきたペットボトルの移し替えで十分と考えていて、常日頃からそうやって出している。バレないコツは煙草の吸殻を少しだけ混ぜるのだ。そうすると深みのようなものが出るらしい。にわかには信じられないが、未だバレたことはない。
ある程度の仕事をこなすと、時間はすでに正午を過ぎてしまっていた。風太は一度本社から出ると、行きつけのカフェへ向かった。お昼ご飯を食べるのと同時に、午後から一人の作家と打ち合わせをすることになっている。そのカフェに行くようになったのも、これから打ち合わせをする作家が好んでよく行くからだ。
本来、風太はカフェでコーヒーと本を両の手に持ちつつ、いかにしてこの手一杯の状況でランチを嗜むかを考えるようなオシャンティーな人間ではない。本当のことを言えば風太はコンビニのパンが好きだ。何しろとても安い。そしてその安くて陳腐な味がたまらないと、友人によく話している。