【前回の記事を読む】理不尽な非難に堪忍袋の緒が切れ…「友達でも何でもない」

第四章

二、三年生の中で希望者の数名が参加できる「デザイナーズウィーク」というイベントが毎年開催される。

三年生になった私は就職活動を一年後に控えているため、少しでも多くの作品を作りたくて栄美華と参加を決めた。栄美華は前年度も参加していたので、流れを把握している事もあり、今年のリーダーとなった。今年のテーマは[楽器]だった。

六人一チームで構成し、一人一作品を同じブース内に展示する。楽器を日常の中に落とし込み、手に取る人が楽しくなるようなデザインを考案することになった。初めて学校での本課題と並行して課外活動をするので、うまく両立してやれるのか、不安が少しだけあった。デザインの方向性やコンセプトが固まるまでは気が休まらない。

デザイナーズウィークに参加してからは毎日といっていいほど栄美華と会った。授業を受けたあとは食堂でご飯を食べながら、就職や将来について語り合う事も増えた。

私はテレビ局の舞台セットに興味があったのだけど、就職先は限られていて狭き門であったため諦めていた。いいや、本音を言うと働く前から、テレビ局での時間に縛られた重労働をやりこなす自信がなかっただけだ。無難にも就職先の多い一般企業での「デザイナー」の枠で、いくつか企業に応募するつもりだった。

栄美華は会社勤めをした後、独立してフリーでデザインをするか、もしくはデザイナーをやめて手に職を付けて働くなどして、もっと手広くできる仕事を探すのも有りだと楽しそうに話す。この底抜けの明るさに将来の不安などかき消されてしまう。

大学を卒業すると、四年間、そのほとんどの時間を共有してきた友人と離れ離れになってしまうことになる。寂しさはもちろんあったが、学生でなくなり社会人として扱われるようになることを心待ちにしていた。

「あと一年半でできることはなんでもやろうね!」

「そうだね。最後の学生生活全力で楽しもう」

「栄美華、明日暇してる?」

「授業が午前の一コマあるだけだよ」

「行きたいカフェがある」