エッセイ 詩 哲学 2022.05.21 【詩集】「其処には、戦争の様子が見えた。」 下界 其処には 戦争の様子が見えた。 原爆が爆発した…… 夥しい死者 負傷者 泣き叫ぶ声 憎しみ合い 殺しあう様 地獄絵図 悲しみの極。
小説 『曽我兄弟より熱を込めて』 【最終回】 坂口 螢火 用意した死に装束を、我が子に着せる。まだこんなに小さいのに、斬首だなんて…私が身代わりになって死にたい! 青天の霹靂とは、まさにこのこと。聞いた母の驚きは尋常のものではない。「エ――エッ! 何と、何とおっしゃいます!」声さえ別人のごとく裏返って、「厭です! 厭です! 渡しません、断じて……」絶望的な悲鳴を上げ、曽我太郎に取りすがって泣きわめいた。その母の絶叫に驚いて、一萬と箱王が「母上! いかがなさいました」と座敷に駆け込んでくる。「オオ――一萬、箱王」母は無我夢中で二人を左右にかき抱くと、黒髪を振…
小説 『千年の密約』 【新連載】 藤基 寛 「この条件を受け入れるなら、あと10年の命を授ける」――病に伏す姫君に閻魔が持ちかけた“恐るべき取引”とは? 内裏にいる左大臣藤原道長(ふじわらのみちなが)のもとに使いの者がやって来たのは夕暮れ前であった。道長がその知らせを聞いて慌てて馬を走らせ向かった先は、東京極大路と綾小路が交わる辺りの小さな邸であった。庭の手入れは行き届いているが、どことなく華やかさに欠けている。「如何されましたか」「姫が今朝より起き上がれず返事もございません」道長の問いかけに応えている老女は、臥せっている姫の祖母の昌子(せいし)…