地上で行なっていたスポーツのほとんどすべてができるように工夫されている。テニスだってゴルフだってできる。もちろんバーチャルのゴーグルをつけてのプレーとなるのであるが、四季折々の景色も再現でき、海外のゴルフ場にも出かけられるし、あこがれのプロのテニス選手とも対戦できる。
できない競技といえば、サッカーや野球のような団体競技である。登山なんかは世界のあらゆる山に登ることができ、ロッククライミングも楽しみの一つとなる。
織田がバーチャルシステムの完成度を確認するために、闘牛をしてみたいと、バーチャル闘牛場を再現させた。このシステムはものすごくできが良く、織田がゴーグルを被って赤い布をひらひらさせたら、牛が怒って織田に突っ込んできた。逃げきれない織田は牛に跳ね飛ばされるが、このときひそかにセットしてあった空気銃から衝撃波が放たれ、織田はまるで牛に跳ねられたかの如く空に舞ったのである。
その他には、プールにも水を張って泳ぐことができる。25メートルほどの丸い池は飛び込み用とスキューバダイビングに使われる。海や池の中をバーチャルで再現して色とりどりの魚が泳ぐ南国の海を楽しむこともできる。
星野と中本が、地球を出発する前に、地球とのお別れの記念にと世界一天国に近い島といわれる美しいニューカレドニアで走ったニューカレドニアマラソンとダイビングのことを思い出し、星野が、「このバーチャル、本物そっくりだ、よくできてるな」と、感心した。
「あのときのマラソンはあまりの暑さで30キロ地点で足がつってしまい、ひどい目にあったな」と、当時を振り返る。
中本が「マラソンのあとゴルフをして、海に突き出た素敵な海上レストランで飯を食ったな」と言うと、「そうだ、そのときレストランの可愛いウエートレスから海に潜るとウミガメに会えると聞いて、翌日2人で潜りに行ったな。残念ながらウミガメには会えなかったが今日の潜水でまさかウミガメに会えるとはな」と、懐かしがる。
2人は、気付いていないが乙姫が2人の深層意識の中に、ニューカレドニアでウミガメに会えなかったことの記憶が残っていることに気付いて、バーチャルの中にウミガメを入れ込んだのだ。
ほぼ完璧なバーチャルシステムが乙姫によって完成した。これなら6人が故郷が恋しくなったときにでも十分耐えられる。