捕獲した個体の体重はそれぞれ300、170、150、135、120、85、75gで1頭が特に大きかった。うち1頭(120g)は死んだ状態で捕獲された。ストレスによって死んだのだと考えると、環境に適応する能力に個体差があり、その幅が大きいことがわかる。大きい個体2頭はシャッターの外で捕獲され、他の5頭はすべてシャッターの中で捕獲された。
点検の際に、店舗外に設置した捕獲具のそばで猫が居座っているのを目撃した。小さい子ネズミを捕まえて食べたことがあるので、居座っているのではないかと想像した。
シャッターの外は猫がいる危険区域である。大きい2頭の個体はいつも危険区域でパンを食べていたのだろうか?もしそうだとすると安全に餌が取れる場所を小さい個体に譲り、あえて、危険区域で餌を探していたことになる。
捕獲したネズミたちが家族関係にあり、外で捕獲された大きい2頭が親であることを証明することは困難だが、もしそうだとすると、親は2~3回の出産で生まれた子と共同生活を行っていて、子たちは常に親の庇護のもとにあったことになる。
クマネズミの親と変わらないくらい大きく育った個体まで、まだ子ども扱いされて安全な所で餌を探している。子がいつまでたっても独立しようとしないのなら、ドブネズミの世界では親は常に過保護だということになる。
大阪の繁華街では深夜に猫ほどの大きさのドブネズミが腹を揺すりながら我が物顔で通りを横切るそうである。天敵である猫を恐れないのだから人間など怖くない。これも、子に安全な場所を譲り、あえて危険地帯で餌を探す親の姿だと解釈すると微笑ましい。
パンだけ食べて捕獲できなかった捕獲具が4箱あった。そのうち3箱の中のパンはゼロになっていた。回収した捕獲具のうち、錆び始めている捕獲具が3分の1ほどあったので、清掃の時に流す海水によって錆が生じて、捕獲具がうまく作動しなかった事が原因と考えられる。
捕獲できなかったネズミがいるので、錆びていない捕獲具を選び数を減らして巣の近くに継続して設置すると、1週間ほどして1頭が死んだ状態で捕獲された。このネズミも体を丸くして座った状態で死んでいた。
多くの個体が捕獲されていなくなっているのに、捕獲具の危険性が全く認知されていない。親兄弟が行方不明となった異常事態なのに、それさえ分からない馬鹿な個体が残ったのであろうか?餌付け期間が長い場合、捕獲具の危険性が認知されにくく、残った個体を捕獲することが容易であると考えた方が妥当だろう。
そうすると、捕獲できずに残った個体がそんなに多くなかったことになる。捕獲試験の期間を、調査期間も含めて約1カ月として許可を取っていたので、この時点で試験を終了した。